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相続土地国庫帰属法第5条1項5号および施行令第4条3項では、
「通常の管理または処分にあたり過分な費用または労力を要する土地」は国が承認できない
と規定されています。
この条項は、「他の明確な不承認要件に該当しない土地」であっても、国が管理の負担を極端に増大させると認めた場合は不承認とできる「包括規定」ともいえるものです。
そのため、実務上は以下の類型に該当すると判断されると、申請が不承認とされる可能性が高くなります。
(1)災害危険を防止するために継続的な措置が必要な土地
次のような土地は、管理のために大規模な工事や継続的な対応が必要となるため、
承認されません。
【該当事例】
・土砂崩壊の危険がある斜面地で、崩落防止工事が必要な場合
・大きな陥没が存在する土地で、転落防止のため埋め立てが必要な場合
・大量の水が湧出する土地で、排水ポンプや排水設備を常時稼働させる必要がある場合
これらは、災害の可能性について具体的で客観的な資料がある場合に限って、
適用されるとされています。
(2)動物による被害が「継続・予測される」土地
土地に生息する動物が人命や農作物に被害を及ぼす場合も、不承認の対象となります。
【該当事例】
・スズメバチ巣、クマやイノシシ等が土地内に常時出没し、
周辺住民の生命や身体に危険を生じる場合。
・病害虫が蔓延しており、農作物・樹木に大きな被害が出ている場合。
これらも 具体的かつ客観的な情報(防除記録・自治体通報等) が必要とされています。
(3)森林整備が遅れており、国による大規模整備が必要な土地(山林)
森林では、森林法に基づく整備状況が審査対象になります。
【該当事例】
・市町村の森林整備計画と適合しない状態のまま長期間放置されている。
・適切な造林・間伐・保育が行われておらず、
国が整備を実施しないと危険または荒廃が進む状態。
・天然林の標準伐期齢が不明で、整備履歴がない場合(林齢確認が必要)。
これらの審査では、
実地調査に管理予定庁(林野庁など)の担当者が同行し、現況を詳細に確認します。
(4)国庫帰属後に国が追加負担すべき金銭債務が確実に発生する土地
法令に基づく金銭賦課が確実な土地も不承認となります。
【該当事例】
・土地改良法36条1項による賦課金が、近い将来確実に発生すると判明している土地
この判断は、土地改良区等からの資料提供に基づき行われます。
(5)国庫帰属後に申請者の金銭債務を国が承継することになる土地
【該当事例】
・土地改良区に対しすでに賦課金の支払い義務が発生している土地
(国庫帰属すると、その債務を国が引き継ぐことになるため不承認)
この判断も、土地改良区等の関係機関からの資料がもとになります。
承認申請が受理されると、法務局で次の二段階の審査が行われます。
(1)書面調査:写真・資料・計画書を中心にチェック
法務局は、申請者が提出した以下の資料をもとに、土地が不承認類型に該当する可能性を精査します。書面調査での主な確認事項は次のとおりです。
・現況写真
・森林病害虫防除法に基づく地区実施計画の対象かどうか
・市町村の森林整備計画や森林簿
・土地改良区の資料(賦課金の発生可能性)
・天然林の場合、標準伐期齢または申請者への林齢確認
こうした資料により、「過分の費用・労力」が発生する可能性を事前に把握します。
(2)実地調査:管理予定庁と共同で現地を精査
書面調査で懸念が認められた土地については、法務局職員が管理予定庁(林野庁・農水省等)と同行して実地調査を行います。実地調査での確認ポイントは、次のとおりです。
・斜面、陥没、湧水など災害性の有無
・クマ、イノシシ、ハチなどの痕跡や巣の存在
・森林の荒廃状況や間伐の不足状況
・賦課金に関連する施設、排水路、農業用設備の状況
必要に応じて関係機関へ意見照会を行い、国が通常の管理に過剰な負担を負うかどうかを総合的に判断します。この5号要件は、他の不承認事由に該当しない土地でも、
「国が引き受けるべき負担が不相当に大きい」場合に適用される重要な条項です。
とくに、
「山林・斜面地・農業用地」は該当しやすく、実務上も慎重に判断される傾向があります。
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