運営:行政書士平田総合法務事務所/不動産法務総研
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親族間売買の中でも、特に割賦(分割)払いを採用するケースでは、支払いが長期にわたるという特性上、買主が途中で支払い不能に陥るリスクを常に抱えることになります。
売主としては、たとえ親族間の取引であっても、売買代金の大部分をまだ受領していない
段階で所有権を移転してしまうことに、不安を感じるのは当然のことです。
このような不安を解消し、
長期の支払いを確実に担保するための最も強力な手段が「公正証書」の作成です。
公正証書は、公証役場において公証人が作成する公文書であり、一般の私文書である契約書とは異なり、高い証明力と強制力を持ちます。
割賦契約の実務では、
手付金や内金の支払い時に所有権を移転するケースが多く見られますが、その反面、売主は残額の支払いを確実に担保できる仕組みを構築しておかなければなりません。
公正証書はまさに、その担保として機能する最強の安全装置なのです。
公正証書にする最大のメリットは、裁判なしで差し押さえができる「執行力」があることです。
特に効果が大きいのが「強制執行認諾文言付き公正証書」です。
これは、買主が割賦金の支払いを滞納した場合、売主が裁判を起こさずとも、直ちに強制執行に移行できる効力を持ちます。
通常の債権回収では、「①訴訟 → ②判決 → ③強制執行」という時間とコストを要するプロセスが必要になります。
しかし、強制執行認諾文言付き公正証書があれば、公証役場で「執行文」の付与を受けるだけで、即座に差押えの手続きに進むことができます。
さらに、公正証書は「税務上も強力な証拠資料」となります。
親族間売買は、税務上のチェックが入りやすい分野であるため、
・実際に分割払いが存在すること
・支払計画が明確であること
・履行状況が客観的に確認できること
といった要素を公的な文書として残しておくことは、税務リスクを軽減するうえでも有効です。
割賦払いを確実に担保するためには、「強制執行認諾文言付き公正証書」の作成に加え、
抵当権設定登記を行うことで、割賦金の回収はより強固になります。
強制執行認諾文言付き公正証書があれば、割賦金の支払いが滞った際に金銭の強制執行は可能です。
しかし、執行できる対象は、法律上
一定の額の金銭の支払を目的とする請求権(金銭債権)に限定されています(民事執行法第22条)。
つまり、債務者の給与や銀行預金、売掛金などの金銭債権は差し押さえができますが、抵当権を設定していない限り、その公正証書だけで直ちに土地や建物を競売にかけることはできません。
公正証書は「金銭を払え」という証明にはなりますが、「その不動産を競売にかけて売却しろ」という直接の命令書にはならないためです。
親族間売買の割賦払いで、万が一の際に不動産を競売にかけて回収したいのであれば、
公正証書を作るだけでなく、同時に不動産登記簿に「抵当権」の設定登記をしておく必要があります。
なお、買主の割賦金不払いの際、売主が競売による不動産売却ではなく「返還」を希望する場合は、
公正証書に「無催告解除条項」と「登記復帰条項」を明記するとともに、抵当権設定登記ではなく、「代物弁済予約による所有権移転の仮登記」をする必要があります。
どちらを選択するかは、売主が希望する回収方法によって異なり、
ここは実務上の重要な分岐点となります。
割賦金の支払い期間が長期に及ぶ場合、売主が完済を受ける前に死亡する可能性も、現実的に
存在します。その場合、未回収の割賦金は「債権」として、他の財産と同様に相続の対象となります。
たとえば、
・売主:親
・買主:子(複数相続人のうちの1人)
という構図で親族間売買が行われていた場合、売主が亡くなると、残額の割賦金債権は相続人全員の
共有となります。
そして、買主が相続人の一人である場合、他の相続人から「割賦金の残額を請求される」という事態が発生しかねません。そのため、売買契約の前段階で、他の相続人から親族間売買への理解を得ておくことは非常に重要です。
また、生前の対策として、他の相続人に遺留分に配慮しつつ、
「残りの割賦金債権は買主である子に相続させる」とする遺言書を作成し、
実質的には債務免除と同じ効果を持たせることも、争いを防ぐうえで有効です。
遺言書がなければ、遺産分割協議の中で割賦金の扱いが争点となりやすく、親族間売買が「争族」の
火種になるリスクも否定できません。
割賦払いを選択する場合には、売買契約と同時に、相続面のリスク対策もセットで考えておく必要があります。
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「相続不動産の売却、親族間売買、個人間売買」について、実務の観点から図解・イラストで解説しています。本書を読むことで、不動産取引に付きまとう「5つの不(不安・不満・不便・不都合・不経済)」が
解消します。
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