運営:行政書士平田総合法務事務所/不動産法務総研
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4-1|遺留分侵害額請求の意思表示
4-2|遺留分侵害額請求の意思表示の方法
4-2-1|特定記録郵便とは
4-2-2|公示送達とは
4-3|遺留分侵害額請求権の消滅時効
4-4|遺留分の放棄
5-1|遺留分侵害額とは?
5-2|総体的遺留分とは?
5-3|個別的遺留分とは?
5-4|遺留分算定の基礎となる財産額
「遺留分制度」とは、被相続人が有していた相続財産について、
一定割合の承継を、一定の法定相続人に保障する制度です。
そのため、一定の法定相続人に保障されたこの権利は、
たとえ遺言であっても、奪うことはできません。
例えば、遺言によって長男に遺産のすべてを譲るとしたり、愛人に財産を残されたりした場合でも、一定の範囲の相続人は、遺留分を主張すれば必ず一定の財産を取得できます。
また「相続制度」とは、「遺族の生活保障」や遺産形成に貢献した「遺族の潜在的持分の清算等」の
機能を有していますので、一方で、被相続人は自己の財産を自由に処分することができます。
そこで民法では、
「被相続人の財産処分の自由」と「相続人の保護」という相対立する要請の調和を図りました。
つまり、遺留分を侵害する遺言も「一旦、有効」とした上で、これを覆して侵害された遺留分を回復するか否かを、遺留分権利者の自律的決定に委ねたものといえます。(要は「好きにしろ」ということ)
令和元年6月30日以前の「改正前:民法」では、遺留分減殺請求権が行使されると、その侵害の限度で遺贈及び贈与の効力は消滅し、一部無効になるという効果があったため、対象財産の権利は当然に遺留分権利者に復帰することになり、その結果共有不動産が多く発生しました。
その後、令和元年7月1日に施行された「改正後:民法」では「遺留分減殺請求」は「遺留分侵害額請求」に改正され、
それ以降に発生した相続での遺留分侵害については、
不動産の共有持分等の「現物」ではなく、侵害額に相当する金銭を請求できるのみとなりました。
遺留分が認められる範囲(遺留分権利者)については、
次のように取決められています。
(1)配偶者、子、直系尊属及びこの代襲相続人が対象
(2)兄弟姉妹や甥・姪には遺留分は無い
(3)胎児も死産でなければ、子として遺留分を持つ
(4)相続権を失った者(欠格・廃除・放棄)には遺留分は無いが、
欠格及び廃除で相続権を失った当該相続人の代襲相続人は遺留分を持つ
(5)相続放棄をして相続人ではなくなった者に遺留分は無いが、
次順位の相続人が第三順位(兄弟姉妹)でなければ(第二順位の父母など)、遺留分を持つ
遺留分侵害額請求とは、偏った不平等な遺言や贈与で遺留分を侵害された法定相続人が、侵害した人に対して、侵害された
遺留分を取り戻すための請求をいいます。
例えば、
遺言で「全ての財産を長男に相続させる」となっていても、
二男や三男は長男に対して、遺留分侵害額請求権を行使して、法律で決められた最低限の遺留分を取り戻すことができます。
また、遺留分侵害額請求は、侵害額に相当する金銭給付を目的とした金銭債権を生じさせる請求です。例えば、先ほどの例で「全ての財産を長男に相続させる」という遺言があり、二男の遺留分侵害額が
300万円分であったとき、二男は長男に対して、300万円のお金の支払いを請求できます。
遺留分侵害額請求の意思表示には、以下の2つがあります。
①遺留分侵害額請求の「債権を発生させる」意思表示
②遺留分侵害額請求の「債権の履行を求める」意思表示
これら2つは同時に行われることが多いですが、
別に行うことも可能です。
上記①の遺留分侵害額請求の場合、「債権を発生させる」ための形成権行使としての遺留分侵害額請求の意思表示には、金額を明示する必要はありません。
また、債権を発生させるための形成権行使であれば、請求された受遺者や受贈者は
「期限の定めのない債務」を負うことになるだけで、当然に履行遅滞とはなりません。
意思表示の方法としては、意思表示を記載した書面を作成し、請求する相手に送付します。
送付した書面は、相手側に到達することが重要になりますが、「到達」とは、相手方が直接受領する場合はもちろん、
相手方了知可能な状態に置かれることも含まれます。
「了知可能な状態」とは、
具体的には郵便物が郵便受に投函されたり、
本人の住所地で同居の親族などが受領した場合にも、到達があったとされます。
また、民法第97条第2項では、
「相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は、通常到達
すべきであったときに到達したものとみなされる」と規定しています。
「意思表示の通知が到達することを妨げたとき」とは、意思表示が了知可能な状態に置かれることを
相手方が妨げたこと」をいいます。
例えば、
通常、意思表示は「配達証明付き内容証明郵便」で意思表示をすることになりますが、あらかじめ
郵便内容を予測して受け取らない相手方もいます。
そうなると、郵便局での留置期間満了で差出人に戻されることになりますが、返却理由が「受領拒否」の場合は、それをもって「了知可能な状態に置かれたうえで、正当な理由なく受領拒否した」との証明になり、到達したとみなされます。
また、相手方は、不在者配達通知書から再配達を指定することが容易にできるにもかかわらず、それをしなかったり場合は、郵便局での留置期間満了時に到達したとする判例もあります。
但し、返却理由が「留置期間経過」の場合は、相手が長期不在であったり、不在者配達通知書の存在に気付いても悪気なく郵便局に取りにいかないケースもあるため、この場合は到達したことにならないとする判例もあり、見解が分かれるところではあります。
そこで、以下のような対策も有効な場合があります。
<相手が受け取り拒否しそうな場合の対策例>
1.直接会って口頭で伝える
※将来の訴訟を見据えて2人以上で相手と会い、会ったことを証言してもらう。
2.書面を直接手渡す
※相手から文書の受領証を回収する。
3.内容証明郵便を再送する又は特定記録郵便と内容証明郵便を併用する
※特定記録はネット上で配達状況を確認できるが、配達の記録(受領印)は無い。
※内容証明の文章に、特定記録で同一内容の文書を送付した旨を付記しておく。
4.普通郵便で内容証明郵便の写しを郵送する。
※読んでもらえる可能性は高まるが、到着や通知の証明にはならない。
5.公示送達
※公示送達とは、裁判所の前の掲示板に一定期間掲示するだけで、実際には相手に届いていない
のに、掲示期間終了時に送達したと認める(届いたことにする)、という特殊なものです。
使える要件が厳しいので、必ず利用できるものではありません。
・特定記録郵便とは、差出人の出した郵便物の引受や配達状況を記録してくれる
郵便局のサービス。引き受けの記録として、郵便局より受領証が渡される。
・配達状況はネット上の追跡サービスで確認でき、受取人の郵便受けに投函するため、
相手が不在でも確実に届く。郵便局からの配達完了メール通知サービスは利用可。
・公示送達とは、相手方の所在が不明で意思表示が到達されないような場合、あるいは相手方が
死亡し、相続人が誰であるかが分からないような場合に、裁判所に申立てをすることで、
法律上、表意者の意思表示を到達させてしまう制度です。
・公示送達は、意思表示を法律上、相手方に到達させてしまう制度となるため、相手方にとって
大変な不利益を与えてしまうことにもなりかねません。
したがって、あまり簡単に裁判所が申立てを受理しません。
遺留分侵害額請求権には、
・遺留分侵害額請求権の時効
・遺留分侵害額請求権の除斥期間
・金銭支払請求権の時効
など、3つの時効と除斥期間があります。
以下に詳しく解説します。
1.遺留分侵害額請求権の時効(民法第1048条前段)
※相続開始と遺留分の侵害を知ったときから1年
遺留分侵害額請求権は、相続が開始したこと及び遺留分を侵害する遺贈や贈与などがあったことを
遺留分権利者が知ってから1年の間に行使しないと時効により消滅します。
また、遺贈や贈与があったことを単に知ったというだけではなく、その遺贈や贈与が自分の遺留分
を侵害することになることを知っていることが必要です。
「いくら侵害されたか?」など金額は必要ありませんので、ひとまず時効進行を止めるためにも、
遺留分侵害額請求の意思表示はしておいたほうが良いです。
2.遺留分侵害額請求権の除斥期間(民法第1048条後段)
※相続開始から10年
遺留分侵害額請求権の「除斥期間」というものは、一般的に停止(完成の猶予)や中断(更新)は
ありませんので、「1.」のような相続開始や遺留分侵害されるような遺贈や贈与があったことを
遺留分権利者が知らなくても、除斥期間の経過で時効が成立してしまいます。
遺留分侵害額請求権の場合は、相続が開始してから10年が経過すると消滅します。
3.金銭支払請求権の時効(民法166条1項1号)
※遺留分侵害額請求の意思表示をしてから5年
遺留分侵害額請求権の行使によって発生させた金銭の請求債権は、遺留分侵害額請求権とは
別の権利として、原則5年で時効が成立します。
ということは、遺留分侵害額請求権を行使しても、その後5年間に何も行動しなければ、金銭請求
はできなくなってしまうということです。そのため、5年以内に裁判上の請求をして時効を止める
必要があります。
「遺留分の放棄」は、相続開始前では家庭裁判所の許可を得て放棄することができます。
裁判所の許可を要件としているのは、被相続人や共同相続人らの威圧により放棄を強要されるおそれがあるためです。
遺留分の放棄は相続放棄ではないので、
相続開始後の相続人としての地位に変動はありません。
また、遺留分の放棄があったからといっても、他の共同相続人の遺留分が増えるわけではなく、被相続人が自由に処分できる財産が増えるだけでになります。
但し、遺留分放棄の代償として贈与を受けた場合、その贈与に対して、他の遺留分権利者から
遺留分侵害額請求を受けると、相続人である以上、その贈与も請求対象となり、代償としての贈与を
確保できなくなることもあります。また、その贈与は特別受益として考慮される。
尚、相続開始後の遺留分放棄は、家庭裁判所の許可無しに自由にできるます。
「法定相続分・遺留分割合」 一覧図
※上表中の子・直系尊属・兄弟姉妹が各複数人いる場合は、個個人の法定相続分・遺留分はそれぞれの人数で除した割合となる
遺留分侵害額とは、遺留分権利者が被相続人の財産から遺留分に相当する財産を受け取ることが
できない場合の不足額を意味します。
<「遺留分侵害額」算出の計算式>
遺留分侵害額
=遺留分額(遺留分算定の基礎となる財産額 × 総体的遺留分率 × 個別的遺留分率)
−遺留分者が受けた贈与・遺贈・特別受益の額
−遺産分割の対象財産(未処理遺産)がある場合に遺留分権利者が取得すべき具体的相続分に
相当する額
+遺留分権利者が負担する承継債務
総体的遺留分とは、相続財産全体のうち遺留分権利者全体に留保されるべき遺留分の総額をいいます。
<「総体的遺留分」算出の計算式>
①「総体的遺留分」算出の計算式
総体的遺留分=遺留分算定の基礎となる財産額 × 総体的遺留分率
②「総体的遺留分率」
イ)直系尊属のみが相続人の場合 1/3
ロ)「イ」以外の場合 1/2
個別的遺留分は、遺留分権利者個々に留保される、相続財産上の持分割合に応じた個々の遺留分の額をいいます。
<「個別的遺留分率」算出の計算式>
①「個別的遺留分率」算出の計算式
⇒「 個別的遺留分率 = 総体的遺留分率 × 法定相続分 」
②「個別遺留分」算出の計算式
⇒個別的個別的遺留分=遺留分算定の基礎となる財産額 × 総体的遺留分率 × 個別的遺留分率
<「遺留分算定の基礎となる財産額」算出の計算式>
遺留分算定の基礎となる財産額
=相続開始時における被相続人の積極財産(遺贈財産を含む)の額
+相続人に対する生前贈与の額(原則10年以内)
+第三者に対する生前贈与の額(原則 1年以内)
−消極財産(相続債務)
1.「相続開始時における被相続人の積極財産」とは?
・財産中の積極財産を意味し、遺贈(民964)や死因贈与(民554)された財産も、
ここに含まれる。
2.「生前贈与の額」とは?
①相続開始前10年間に相続人にされた特別受益としての贈与
→特別受益に該当する場合に限り、遺留分算定価格に算入されることに注意する。
→2019年改正民法により、遺留分侵害額を計算する際の基礎財産には、
相続開始前10年間の贈与のみしか含まれなくなったことに注意する。
②相続開始前1年間に第三者(相続人以外)にされた贈与
→時期の基準は、贈与契約締結時となる。従って贈与契約締結日が相続開始の1年前の日
以前に締結され、相続開始の1年間に贈与が履行されても該当しない。
③遺留分権利者を害することを知ってされた贈与
→相続開始前の1年前より過去の贈与であっても、遺留分の算定価格に算入される。
※損害を加える事実を知ることで足り、加害意図の有無や遺留分権利者を知る必要はない。
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出版時点の法改正(民法、消費税法、都市緑地等の一部改正法)修正対応と
金利上昇局面を見据え初版に無かった住宅ローン基礎知識を解説追記。身の丈に合った物件価格算出法が好評。
2015年7月に出版の初版。不動産取引の入門編に加え、他書籍で誰も書かなかった不動産オークションのカラクリや地主向け・営業マン対峙法が好評。
累計発行部数12,000部以上売れた集客ノウハウ大全(共著)。SNS全盛の今も使える集客企画ネタ帳の保存版。
令和3年の内閣府による各種調査によると、成人人口の2~3%を占めると推察される事実婚(内縁関係)。一部判例では「婚姻に準ずる関係」として、法律婚と同等の請求権(慰謝料・財産分与など)を認めているものの、決定的に異なるのは「事実婚の配偶者に相続権はない」ということです。特別縁故者として財産の全部又は一部を受け取れる可能性はありますが、時間が掛かる上に、確実に認められるわけではありません。内縁関係の夫婦にとって、どのような生前対策を講じるべきか?
還暦を前に再婚。自分亡き後、妻には経済的に困窮することなく暮らして欲しい。そして、妻亡き後は、先妻との子どもに全て相続させたい・・・。生前に何の対策もしなければ、家産は妻側の家系へ流出してしまいます。しかし、遺言では二次相続以降の承継先指定はできません。こんなとき、民事信託で「後継ぎ遺贈型・受益者連続信託」を組成することで、願いを叶えることができます。どんな信託設計をするべきなのか?配偶者居住権との違いは?
相続財産に賃貸アパート等の収益不動産が含まれる場合、実家などの相続とは異なり、第三者(賃借人)が関わるため、遺産に属する権利義務の取扱いが複雑になります。特に、遺産分割前は遺産の帰属先が決まっていないため相続開始~遺産分割完了までに生じた家賃収入の受け取り、敷金返還債務の負担を「誰が、どうするのか?」という問題が生じます。法律上の解釈は?
相続人全員の合意でできることとは?
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