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内縁関係にある配偶者へ財産を承継させたい場合には、
遺言書の作成とともに、遺言執行者を指定しておくことが極めて重要です。
内縁配偶者には法定相続権が認められていないため、
遺言による対策を講じなければ、原則として財産を承継させることができません。
内縁関係とは、婚姻届を提出していないものの、
社会通念上、夫婦として共同生活を営んでいると認められる関係(事実婚)をいいます。
内縁関係は法律婚に準じた保護を受ける場面もありますが、相続については大きく異なります。
民法上、相続人となることができるのは、
①配偶者(民法第890条)
②血族相続人(民法第887条以下)
に限られています。
ここでいう「配偶者」とは、
婚姻届を提出した法律上の配偶者を意味し、内縁配偶者は含まれません。そのため、内縁配偶者は事実上の夫婦であっても、相続法上は第三者として扱われます。
したがって、生前に遺言等の対策を講じていない場合には、
原則として被相続人の財産を承継することができません。
(1)法定相続人がいない場合
①問題点
被相続人に法定相続人がおらず、かつ遺言書も存在しない場合には、相続財産は相続財産法人となり(民法第951条)、最終的には国庫に帰属します(民法第959条)。
もっとも、内縁配偶者は特別縁故者として、
財産分与を申し立てることができます(民法第958条の2)。しかし、この手続には家庭裁判所への申立てが必要であり、終了までに長期間を要することも少なくありません。
また、必ずしも全財産の取得が認められるわけではありません。
②解決策
このような事態を避けるためには、
・包括遺贈(全財産を遺贈する)
・特定遺贈(特定の財産を遺贈する)
などの遺言書を作成しておく必要があります。
(2)法定相続人はいるが、遺留分権利者がいない場合
①対象となるケース
法定相続人が兄弟姉妹又は甥・姪のみである場合です。
②問題点
兄弟姉妹及び甥・姪には遺留分がありません(民法第1042条第1項)。
そのため、「内縁配偶者に全財産を遺贈する」という遺言を作成しておけば、
理論上は、全財産を内縁配偶者へ承継させることが可能です。
しかし、遺言執行者がいない場合には、不動産の名義変更や預貯金の払戻手続において、
法定相続人の協力を求められる場面が生じることがあります。
法定相続人との関係が良好でない場合には、手続が停滞する可能性が高まります。
(3)法定相続人がおり、遺留分権利者もいる場合
①対象となるケース
法定相続人が子(又は代襲相続人)や直系尊属である場合です。
②問題点
これらの相続人には遺留分が認められています(民法第1042条)。
そのため、「内縁配偶者に全財産を遺贈する」という遺言を作成した場合には、
相続開始後に遺留分侵害額請求(民法第1046条第1項)を受ける可能性があります。
結果として、内縁配偶者は金銭による支払対応を求められることになります。
民法第1009条は、遺言執行者の欠格事由として、
①未成年者
②破産者、のみを定めています。
したがって、内縁配偶者であっても、
成年に達しており、破産者でなければ、遺言執行者に指定することができます。
もっとも、実務上はメリットとデメリットの双方を考慮する必要があります。
(1)内縁配偶者を遺言執行者に指定するメリット
①手続の主導権を確保できる
内縁配偶者自身が遺言執行者となることで、
預貯金の払戻しや不動産の名義変更などの手続について、主体的に進めることができます。
②執行費用を節約できる
弁護士、司法書士、行政書士等の専門家を遺言執行者に指定する場合には、
執行報酬が発生します。
内縁配偶者を遺言執行者に指定すれば、その費用を抑えることができます。
(2)内縁配偶者を遺言執行者に指定するデメリット
①法定相続人との対立が激化しやすい
財産を受け取る本人が遺言執行者を兼ねるため、法定相続人から不信感を抱かれやすくなります。相続人への就任通知や財産目録の交付などの段階で、不要な対立が生じることもあります。
②実務上の負担が大きい
遺言執行者は、
・戸籍収集
・財産調査
・財産目録作成
・金融機関対応
・相続人への通知
など、多岐にわたる業務を行わなければなりません。
配偶者を亡くした精神的負担の中で、これらを遂行することは容易ではありません。
③遺留分対応との役割が重複する
遺留分侵害額請求が行われた場合、内縁配偶者は受遺者として請求の相手方となります。
そのため、
受遺者としての立場と遺言執行者としての立場が重なり、対応が複雑化することがあります。
内縁配偶者へ確実に財産を承継させたい場合には、遺言書を作成したうえで、
第三者の専門家を遺言執行者に指定しておくことが最も安全な方法です。
弁護士、司法書士、行政書士等の専門家が遺言執行者となれば、
相続人への通知や財産目録の交付、不動産の名義変更、預貯金の払戻しなどを
職務として遂行することができます。
また、法定相続人との対応についても専門家が窓口となるため、
内縁配偶者が直接対立の当事者となる場面を大幅に減らすことができます。
その結果、内縁配偶者に心理的負担をかけることなく、
遺言者の意思に沿った財産承継を実現しやすくなります。
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