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前妻(前夫)との子がいる場合

前妻又は前夫との間に子(前婚の子)がいる場合の相続は、
感情的な対立物理的な距離の問題から、
遺産分割協議が最も難航しやすい典型例の一つです。

このようなケースでは、遺言書を作成するだけでなく、遺言執行者を指定しておく
ことが、相続手続を円滑に進めるための極めて有効な方法となります。

前婚の子がいる相続で問題となりやすい事項

前婚の子がいる相続では、主に次のような問題が生じます。

(1)遺産分割協議が成立しにくい

前婚の子も、現在の配偶者との間の子(後婚の子)も、いずれも第1順位の法定相続人であり、その法定相続分に差はありません(民法第900条第4号)。

遺言書がない場合には、相続財産を分けるために
相続人全員による遺産分割協議が必要となります(民法第907条第1項)。

しかし、前婚の子と現在の家族との関係が疎遠であったり、
不仲であったりすることは少なくありません。中には、面識すらないケースもあります。

そのため、協議の場を設けること自体が困難となり、
相続人のうち一人でも協議への参加や署名押印を拒否した場合には、
預貯金の払戻しや不動産の名義変更などの手続を進めることができなくなります。

(2)相続人調査や戸籍収集に時間を要する

遺産分割協議を行うためには、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本等を収集し、
すべての相続人を確定しなければなりません。

しかし、現在の家族が前婚の子の本籍地や住所を把握していないことも多く、
その場合には戸籍をたどりながら、所在を調査する必要があります。

この作業には相当な時間と労力を要することがあります。

(3)遺留分をめぐる紛争が生じる可能性がある

仮に「すべての財産を現在の配偶者又は後婚の子に相続させる」という内容の遺言書が
作成されていたとしても、前婚の子には遺留分が認められています(民法第1042条)。

そのため、前婚の子は、遺留分を侵害された場合には、
財産を取得した者に対して遺留分侵害額請求を行うことができます(民法第1046条第1項)。

その結果、相続開始後に新たな金銭紛争へ発展することがあります。

遺言執行者を指定することによる効果

このような問題は、生前に遺言書を作成し、その中で遺言執行者を指定しておくことによって、大幅に軽減することができます。

(1)遺産分割協議が不要となる

遺言によって財産の承継先が定められている場合には、
原則として遺産分割協議を行う必要がありません

また、遺言執行者が指定されていれば、
前婚の子と現在の家族が、直接交渉を行う場面も大幅に減少します。

そのため、感情的な対立によって手続が停滞するリスクを軽減することができます。

(2)遺言執行者が単独で手続を進めることができる

預貯金の払戻しや不動産の名義変更などについても、
遺言執行者がその権限に基づいて手続を進めることができます。

その結果、他の相続人全員から都度署名押印や印鑑証明書の提出を受ける必要がなくなり
相続手続を円滑に進めることが可能となります。

法的根拠

民法第1012条第1項は、遺言執行者について、
遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する
と定めています。

また、民法第1013条第1項は、遺言執行者がある場合には、
相続人は遺言の執行を妨げる行為をすることができないと規定しています。

さらに、同条第2項は、これに違反する処分行為を原則として無効としています。

第三者の専門家を遺言執行者に指定する重要性

民法第1009条により、遺言執行者は未成年者及び破産者を除き
誰でも就任することができます。

そのため、相続人の一人を遺言執行者に指定することも可能です。

しかし、前婚の子がいるケースでは、単に遺言執行者を指定するだけでなく、第三者の専門家を遺言執行者に指定しておくことが望ましいといえます。
ここでいう第三者の専門家とは、弁護士、司法書士、行政書士など、公平・中立な立場で業務を遂行できる者を指します。

現在の配偶者や後婚の子を遺言執行者に指定した場合には、
前婚の子への通知や財産目録の交付などの過程で感情的対立が再燃し、手続が停滞したり、
不要な紛争が生じたりする可能性があります。

これに対し、公平・中立な第三者の専門家を遺言執行者として指定しておけば、
相続人間の感情的対立から距離を置きながら、法的手続を粛々と進めることができます。

そのため、前婚の子がいる事案では、遺言書の作成とあわせて、第三者の専門家を遺言執行者として指定しておく意義は極めて大きいといえます。

 

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