運営:行政書士平田総合法務事務所/不動産法務総研
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遺言書によって財産の承継先を定めていても、
その内容を実現するための手続が滞ってしまっては意味がありません。
特に、相続人の中に遠方や海外に居住している者がいる場合には、
手続の負担が大きくなり、遺言執行者の有無が相続手続の円滑な進行を左右する重要な要素となります。
遺言書が存在していても、遺言執行者の指定又は選任がない場合には、遺言内容を実現するための具体的な手続は、原則として相続人全員が共同して行うことになります。
その結果、実務上は次のような問題が生じます。
(1)全相続人の関与が必要となる
各種金融機関の預貯金払戻手続や不動産の登記手続(遺贈による所有権移転登記等)では、
相続人全員の署名、実印による押印及び印鑑証明書の提出を求められることが
少なくありません。
(2)手続が停滞しやすい
相続人のうち一人でも協力を拒否したり、連絡が取れなかったりした場合には、
その時点で手続全体が停止してしまう可能性があります。
(3)特定の相続人に負担が集中する
実際には、国内に居住する一部の相続人が中心となって手続を進めることが多くなります。
しかし、法的権限が明確ではないため、
金融機関や行政機関との対応、必要書類の収集等に多大な時間と労力を要することになります。
相続人が遠方、特に海外に居住している場合には、国内のみで手続を行う場合と比較して、
物理的・制度的な障害が生じ、相続手続は著しく煩雑になります。
(1)署名証明(サイン証明)の取得が必要となる
海外には日本の印鑑登録制度が存在しない国が大半です。
そのため、
印鑑証明書の代わりとして、現地の日本国大使館又は領事館で署名証明(サイン証明)の発行を受けなければならない場合があります。
(2)在留証明の取得が必要となる
海外居住者は、日本国内の住民票が除票されていることが通常です。
そのため、住所を証明する必要がある場合には、
日本国大使館又は領事館等で在留証明を取得することになります。
(3)国際郵便による時間的負担が生じる
①書類の往復に長期間を要する
国際郵便(EMS等)による重要書類のやり取りは、紛失リスクを伴うだけでなく、往復だけでも数週間を要することがあります。
さらに、署名漏れや記載ミスなどの不備があれば再送付が必要となり、
手続が数か月単位で遅延することもあります。
②時差による連絡の困難
海外との時差により、
日本の金融機関や行政機関の営業時間内に連絡を取ることが難しくなる場合があります。
その結果、進捗確認や補正対応が遅れ、手続全体の長期化につながることがあります。
このような負担や手続上の障害を軽減するためには、遺言書で遺言執行者を指定しておくことが強く推奨されます。
民法第1012条第1項は、遺言執行者について、
「遺言の内容を実現するため、
相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する」
と定めています。
また、民法第1013条第1項は、
遺言執行者がある場合には相続人が遺言執行を妨げる行為をすることができないと規定し、
同条第2項は、これに違反する行為を原則として無効としています。
これらの規定により、遺言執行者は遺言内容を実現するために、必要な範囲で相続財産を単独で管理・処分する権限を有し、その権限は相続人による処分行為に優先します。
そのため、遺言執行者が指定されていれば、遺言に基づく預貯金の払戻しや財産の名義変更等の手続を、原則として遺言執行者が中心となって進めることができます。
結果として、遠方又は海外に居住する相続人から、その都度、
①遺産分割協議書への署名
②金融機関所定書類への署名
③印鑑証明書又は署名証明の提出
などを取り付ける必要性を大幅に減らすことができ、
相続手続を円滑に進めることが可能となります。
このため、相続人の中に遠方居住者や海外居住者がいることが予想される場合には、
あらかじめ遺言執行者を指定しておく意義は極めて大きいといえます。
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