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不動産親族間売買の実務①直接売買の光と影

「コスト削減メリット、隠れたリスク」の正体

親族間・個人間売買を検討するとき、多くの人がまず思い浮かべるのは
「仲介手数料を節約できる」というメリットです。

一般的な不動産取引では、売主・買主双方が不動産会社に手数料(売買価格の3%+ 6万円+消費税)を支払うため、数千万円規模の取引では数百万円単位の負担が発生します。

この費用をカットできることは、確かに大きな経済的メリットです。

しかし、不動産実務の視点から強調したいのは、
「手数料の削減」という“目に見えるメリット”の裏側に、通常であれば不動産会社が担うべき重要な役割(価格妥当性の検証・法務チェック・契約書作成・不動産調査・リスク開示)を、すべて売主・買主自身が負うことになるという、極めて重い現実です。

直接取引の「光」:コスト削減と柔軟な交渉

(1)仲介手数料が不要=数百万円単位の節約

仮に、5,000万円の物件を売買する場合、
売主・買主いずれか片側の仲介手数料は約171万円、
双方で約342万円に達します。

親族間であれば、この数百万円を
「親の老後資金に充てる」
「子どもの住宅ローンの頭金に回す」ことも可能です。

(2)広告が不要=近隣に知られないプライバシー性

通常の売却であれば、チラシ・ポータルサイト・看板などで広く告知され、近隣に売却の事実が伝わることがあります。一方、親族間売買では広告が不要であるため、周囲に知られることなく売買を進めることが可能です。

(3)親族間ならではの柔軟な取引条件

次のような柔軟な条件も、血縁者間だからこそ実現できます。
・決済後の引渡し猶予
・割賦払い、代物弁済などの特殊な支払方法

他人同士では難しい取り決めも、信頼関係があれば合意できます。

直接取引の「影」:不動産会社が担う役割が消える

(1)「重要事項説明書」がない

「重要事項説明書」とは、不動産売買や賃貸借契約において、
宅地建物取引業者が契約前に買主や借主に対し、トラブル防止を目的として物件や取引に関する重要な情報を記載し説明する義務がある書面で、宅地建物取引業法第35条に規定されています。

親族間売買や個人間売買で住宅ローンを利用する場合は、
金融機関から必ず審査書類として提出を求められます。

(2)不動産調査の欠落:法令違反・境界問題を見落とす

一般の売買では、不動産会社が行政調査・現地調査を行います。
しかし、直接取引では多くの場合、以下の調査が行われません
・再建築不可の有無
・建築基準法、都市計画法の制限
・接道義務の充足
・越境・境界未確定の有無
・上下水道の引込状況
・道路種別(42条2項道路等)の確認

特に、境界・越境問題は、親族間・個人間であっても、後に深刻なトラブルに発展します。
「問題があると知っていれば買わなかった」
というクレーム(=契約不適合責任問題)も珍しくありません。

(3)「不動産売買契約書」を正しく作成できない

正しい売買契約書であるためには、契約後に様々な問題に対応できなければなりません。不動産とは、本来同じものが2つとない存在なので、実務の不動産売買契約書には、法令上の制限による影響や相隣関係に起因することなど、不動産の「固有の事情」に応じて特約が多数記載されます。

これらの記載が無い契約書は、
ネット上に溢れている「標準的な売買契約書(雛形)」をそのまま使用していることと変わりません。

ネット上の雛型は、どんな契約書にも加工できるように、「基礎的な根幹部分のみ」を記載しているものなので、これに「固有の事情」を追記しなければ、
一見難解そうに見えて、実は「使えない契約書」ということになります。

法的リスクだけでなく「税務リスク」もある

親族間・個人間売買では、税務上から
「本当に売買として成立しているのか」
「贈与を装った取引ではないか」

と厳しくチェックされるため、
普通の取引よりも証拠性や合理性が求められます。

特に、不動産業者が介入しない取引では、
第三者による客観的な価格決定プロセスを経ていないため、
売買価格の妥当性を証明するのが非常に困難です。

たとえば、
親族間売買で、市場価格が4,000万円の物件を「身内だから」という理由で2,000万円で売却した場合、税務上はその差額の2,000万円を「みなし贈与」と判定します。この場合、買主には多額の贈与税が課せられることになります。
「良かれと思って安くした」という親の善意が、結果として子どもへの重税を招くことにもなりかねません。

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