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遺言執行者は、相続財産の調査が完了した後、相続財産目録を作成し、
相続人に交付しなければなりません。
民法第1011条第1項は、
「遺言執行者は、遅滞なく、相続財産の目録を作成して、相続人に交付しなければならない。」と規定しています。
相続財産目録の作成は、単なる事務手続ではありません。遺言執行者が管理・執行の対象となる財産を明確にし、相続人に対して執行状況を説明するための重要な義務です。
遺言執行者が財産目録を作成する主な目的は、次の二つに整理することができます。
(1)遺言執行の対象財産を明確にするため
遺言執行者は、遺言の内容を実現するために必要な一切の行為を行う権限を有しています。
しかし、その前提として「どの財産が執行対象となるのか」を確定しなければなりません。
相続財産目録は、執行対象となる財産を一覧化し、遺言執行業務の基礎資料となるものです。
(2)遺言執行者の管理権限の対象を明確にするため
遺言執行者は、相続財産について管理権限を有します。
そのため、どの財産について管理・保全・処分を行う権限を有するのかを客観的に示す必要が
あります。相続財産目録は、その管理権限の対象範囲を明確にする役割も果たします。
財産目録の作成は、原則として遺言執行者が単独で行います。
もっとも、民法第1011条第2項は、
「遺言執行者は、相続人の請求があるときは、その立会いをもって相続財産の目録を作成し、
又は公証人にこれを作成させなければならない。」
と規定しています。そのため、相続人から請求があった場合には、
・相続人の立会いのもとで作成する
又は
・公証人に作成を依頼する
必要があります。
これは、財産の隠匿や記載漏れに対する相続人の不安を解消し、手続の透明性を確保するための制度です。
遺言執行者が作成すべき財産目録は、
すべての事案において、被相続人の全財産を網羅しなければならないわけではありません。
遺言の内容や執行の目的によって、記載すべき範囲は異なります。
(1)遺言執行に必要な財産を特定することが原則
遺言執行者の任務は、遺言の内容を実現することにあります。そのため、
財産目録も原則として「遺言執行に必要な範囲」で作成すれば足りると考えられています。
ア.特定財産承継遺言・特定遺贈の場合
例えば、
・「自宅土地建物を長男に相続させる」
・「○○銀行の預金を長女に遺贈する」
といった遺言の場合には、
その対象財産を特定できる程度の目録を作成すれば足りる、と考えられています。
必ずしも、被相続人の全財産を調査・開示しなければならないわけではありません。
イ.身分行為のみを内容とする遺言の場合
認知や推定相続人の廃除など、財産の管理・処分を伴わない遺言については、そもそも執行対象となる財産が存在しません。
このような場合には、財産目録の作成自体が不要となることもあります。
借入金や未払金などの消極財産については、
常に、財産目録へ記載しなければならないわけではありません。
しかし、次のような場合には、債務の記載が重要になります。
(1)包括遺贈がある場合
「財産の2分の1をAに遺贈する」などの包括遺贈では、受遺者は積極財産だけでなく消極財産も承継します。
そのため、受遺者が承継する負担を把握できるよう、債務の状況も記載する必要があります。
(2)清算型遺言の場合
遺産を売却して債務を支払い、その残額を分配する内容の遺言では、債務額の把握が執行手続そのものに直結します。この場合には、債務についても網羅的な調査と記載が求められます。
(3)遺留分が問題となる場合
債務額によって、遺留分の計算結果が変わることがあります。
そのため、判明している債務については、紛争予防の観点から
財産目録に参考情報として、記載しておくことが望ましい場合があります。
民法は具体的な期限を定めていませんが、「遅滞なく」作成・交付することを求めています。
そのため、相続財産の調査が完了した後は、速やかに財産目録を作成しなければなりません。
実務上は、
・就任承諾後、おおむね1か月~2か月程度
・遅くとも、財産の処分や名義変更手続に着手する前
に交付することが望ましいとされています。
財産目録の交付義務の対象は、相続人全員です。
そのため、遺言によって財産を取得しない相続人であっても、相続人である以上は
財産目録の交付を受ける権利があります。
もっとも、推定相続人の廃除によって相続権を失った者などは、この限りではありません。
また、民法上の交付義務は相続人に対するものですが、
実務上は、遺贈を受ける受遺者に対しても、その権利内容に関係する範囲で財産目録や財産情報を開示することが一般的です。
続財産目録は、単なる財産一覧表ではありません。
遺言執行者が、
・どの財産を管理しているのか
・どの財産を執行対象としているのか
・どのような範囲で権限を行使するのか
を相続人に明らかにするための重要な報告書です。
そのため、形式的に作成するのではなく、後日の紛争防止という観点からも、財産の内容や評価額、負債の有無などを可能な限り明確に記載しておくことが望ましいといえるでしょう。
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