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遺言執行者の職務は、遺言の内容を実現することにあります。
しかし、
すべての遺言事項について、遺言執行者による執行行為が必要となるわけではありません。
法定遺言事項の中には、
・遺言執行者による手続きがなければ実現できない事項、
もあれば、
・遺言執行者がいる場合に限って執行権限を行使する事項、
さらには、
・遺言の効力発生と同時に法律上の効果が生じるため特段の執行行為を必要としない事項、
もあります。
そのため、遺言執行者は、まず遺言内容を確認し、
それぞれの遺言事項について、執行行為が必要かどうかを整理する必要があります。
これらは、法律上、遺言執行者の関与が不可欠とされている事項です。
遺言執行者が指定されていない場合には、必要に応じて家庭裁判所へ遺言執行者選任の申立てを行うことになります。
(1)認知(民法第781条第2項)
婚姻外の子を遺言によって認知する場合、遺言執行者は就任後10日以内に認知届を提出しなければなりません。
認知は、戸籍の記載変更を伴う身分行為であり、法律上、遺言執行者のみが行うことができるとされています。
(2)推定相続人の廃除及び廃除の取消し(民法第893条、第894条)
遺言による推定相続人の廃除又は廃除の取消しについては、
遺言執行者が家庭裁判所へ審判の申立てを行います。相続権の存否に関わる重要な手続きであるため、遺言執行者による申立てが必要とされています。
(3)一般財団法人設立のための寄附行為
遺言によって一般財団法人を設立する場合には、遺言執行者が設立手続き及び財産の移転手続きを行います。
遺言者の死亡後に法人設立を実現するには、遺言執行者による執行行為が不可欠となります。
これらの事項は、遺言執行者が存在しない場合には相続人等による手続きも可能ですが、
遺言執行者が就任している場合には、原則として遺言執行者が執行を担当することになります。
(1)遺贈の履行
受遺者に対する財産の引渡しや権利移転手続きがこれに該当します。
例えば、
・不動産の所有権移転登記
・預貯金の解約及び払戻し
・株式その他有価証券の名義変更
・動産の引渡し
などが典型例です。遺言執行者が就任すると、相続人は遺言執行を妨げる行為をすることが
できず、遺贈の履行は原則として遺言執行者が行うことになります。
(2)特定財産承継遺言(いわゆる「相続させる」遺言)の執行
特定の不動産や預貯金を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言についても、
遺言執行者は、対抗要件を備えるために必要な手続きを行うことができます。
特に、不動産については、所有権移転登記の申請手続きが代表例となります。
(3)生命保険金受取人の変更
保険法第44条により、生命保険契約の受取人は遺言によって変更することができます。
もっとも、その効力を保険会社に主張するためには、遺言者の死亡後に保険会社へ通知する必要があります。
遺言執行者が指定されている場合には、この通知手続きも遺言執行者の職務に含まれると考えられています。
(4)遺言信託に関する手続き
遺言によって信託を設定する場合には、信託財産の移転その他必要な手続きを遺言執行者が行うことになります。
これらは、遺言者の死亡によって法律上当然に効力が生じるため、
遺言執行者による特別な執行行為を必要としない事項です。
(1)相続分の指定又は指定の委託(民法第902条)
相続分の指定は、被相続人の死亡と同時に効力を生じます。どの相続人がどの割合で相続するかという法的地位が確定するため、その効力発生自体に執行行為は不要です。
(2)遺産分割方法の指定及び指定の委託(民法第908条)
「A不動産は長男に、B預金は次男に承継させる」などの指定は、
遺言の効力発生によって法的効果が生じます。もっとも、その後に登記や名義変更などの手続きが必要となる場合には、別途執行行為が問題となることがあります。
(3)遺産分割の禁止(民法第908条)
遺産分割の禁止は、一定期間、相続人による遺産分割を認めないという法的状態を生じさせるものです。遺言の効力発生と同時に効果が生じるため、執行行為は不要です。
(4)未成年後見人及び未成年後見監督人の指定
遺言による指定そのものは、遺言の効力発生によって成立します。
指定された者が就任を承諾することにより、その地位に就くことになります。
(5)相続人相互の担保責任に関する別段の定め(民法第914条)
相続人間の担保責任を免除し、又は変更する旨の遺言も、
遺言の効力発生と同時に効力を生じます。そのため、特別な執行行為は必要ありません。
遺言執行者は、遺言事項ごとに「執行行為が必要か否か」を整理したうえで業務に着手する必要があります。
特に、認知や推定相続人の廃除のように遺言執行者でなければ実現できない事項が含まれている場合には、優先的に対応しなければなりません。
一方で、相続分の指定や遺産分割禁止のように、遺言の効力発生によって当然に効果が生じる事項については、その法的効果を関係者に周知し、必要な後続手続きへつなげることが遺言執行者の役割となります。
したがって、遺言執行の出発点としては、
「何を実行しなければならないのか」と同時に、
「何は既に法律上実現されているのか」を正確に見極めることが重要です。
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