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遺言執行者の就任と遺言内容の通知

遺言執行者の就任

遺言書によって遺言執行者に指定された者は、
その就任を承諾することにより、遺言執行者としての地位に就くことになります。

もっとも、遺言で指定されたからといって、必ず就任しなければならないわけではありません。遺言執行者への就任は本人の意思に委ねられており、承諾することも拒絶することも自由です。

そのため、遺言執行者に指定された者は、まず遺言の内容や相続財産の状況を確認し、
自らがその職務を遂行できるかどうかを検討することになります。

ただし、一度行った承諾又は拒絶の意思表示は、原則として撤回することができません

また、就任を承諾した場合には、遺言執行者としての権利義務が発生し、遺言執行に必要な業務を開始することになります。

就任後に生じる法的効果

遺言執行者が就任すると、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の権利義務を
有する
ことになります(民法第1012条第1項)。

その結果、相続人は遺言の執行を妨げる行為をすることができず、遺言執行者が中心となって
遺言執行手続きを進めることになります。

例えば、
・遺言により遺贈された財産を勝手に処分する
・相続財産を無断で引き出す
・遺言執行者による名義変更手続きを妨害する

といった行為は許されません。

このような重要な法的効果が生じるため、
実務上は、遺言執行者が就任を承諾したことを相続人や関係者へ通知することが一般的です。

遺言内容の通知義務

遺言執行者には、就任後に遺言内容を相続人へ通知する義務があります。

民法第1007条第2項は、「遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない。」と規定しています。

そのため、遺言執行者は就任後できるだけ早い段階で、
法定相続人に対して遺言の内容を通知しなければなりません。

この通知は、相続人に対して被相続人の最終意思を明らかにするとともに、
今後の遺言執行手続きへの理解と協力を求めるための重要な手続きです。

通知の方法と内容

法律上、通知方法について特別な定めはありません。

口頭による通知も理論上は可能ですが、後日の紛争防止や通知の事実を証明する必要性を考えると、書面による通知が望ましいといえます。

実務上は、
・遺言執行者が就任を承諾したこと
・遺言執行者として今後手続きを進めること
・遺言内容の概要又は遺言書の写し

を記載した通知書を作成し、相続人へ送付する方法が一般的です。

通知すべき遺言内容

民法第1007条第2項がいう「遺言の内容」とは、
通常、遺言書の内容を相続人が確認できる程度の情報を意味します。

実務上は、
遺言書の写しを添付して通知することが多く、その内容は遺言の種類によって異なります。

(1)公正証書遺言

公正証書遺言の正本又は謄本の写し

(2)自筆証書遺言

検認済みの遺言書の写し

(3)法務局保管制度を利用した自筆証書遺言

遺言書情報証明書の写し

通知の対象者

法律上の通知義務の対象は、相続人です。したがって、民法第1007条第2項に基づく通知は、
法定相続人に対して行えば足りることになります。

もっとも、実際の遺言執行を円滑に進めるためには、
遺言内容に応じて相続人以外の利害関係人にも通知しておくことが望ましい場合があります。

例えば、次のような者が考えられます。

(1)受遺者

包括遺贈又は特定遺贈を受ける者

(2)遺言認知を受ける子

認知の効力を受ける者

(3)未成年後見関係者

未成年後見人、未成年後見監督人又は被後見人

(4)遺言信託の関係者

受託者及び受益者

このような関係者に対しても、
必要に応じて遺言内容を通知しておくことで、その後の手続きを円滑に進めることができます。

特定遺贈の受遺者への通知

特定遺贈の受遺者については、特に早期の通知が重要となります。
民法第986条は、受遺者が遺言者の死亡後、いつでも遺贈を放棄できる旨を定めています。

また、民法第987条は、遺贈義務者又は利害関係人が相当の期間を定めて、
承認又は放棄の意思表示を催告できることを定めています。

そのため、特定遺贈の受遺者に対して通知を行う際には、

・遺贈の内容
・承認又は放棄を求める旨
・回答期限

を併せて記載し、承認・放棄の催告を兼ねた通知としておくと、その後の執行手続きを効率的に進めることができます。

次の段階へ

遺言執行者として正式に就任し、相続人等への通知を終えたら、次は遺言執行の前提となる相続財産の調査と管理に着手することになります。

適切な通知は、相続人との信頼関係を構築し、後の紛争を予防するための重要な第一歩といえるでしょう。

 

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