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遺贈及び特定財産承継遺言(「相続させる」旨の遺言)に基づく預貯金債権の執行実務は、
改正民法の施行日である令和元年(2019年)7月1日を境に、
適用される法律や遺言執行者の権限が大きく異なります。
【改正民法が適用される場合】
・遺言作成日が令和元年7月1日以降、かつ相続開始日が令和元年7月1日以降
※遺言作成日及び相続開始日の両方が令和元年7月1日以降なら改正民法が適用されます。
【改正前民法が適用される場合】
・遺言作成日が令和元年6月30日以前
・相続開始日が令和元年7月1日以降
※相続開始日が施行日以降であっても、
遺言作成日が令和元年6月30日以前なら改正前民法が適用されます。
預貯金債権を遺贈又は特定財産承継遺言によって取得した場合には、
第三者(他の共同相続人の債権者など)に対する対抗要件の有無が問題となります。
(1)遺贈の場合
遺贈は「遺言による贈与(特定承継)」であるため、
改正前後を問わず、債権譲渡の対抗要件が必要とされています。
対抗要件を具備するためには、
・遺贈義務者(遺言執行者)から債務者(金融機関)に対し、
確定日付のある証書による通知(内容証明郵便等)をするか、
又は
・債務者(金融機関)の承諾を得なければなりません(民法第467条)。
これらの対抗要件を備えなければ、債務者以外の第三者に対抗することができません。
また、遺言執行者は、対抗要件を具備する行為に加え、単独で預貯金の払戻しや口座解約を行う権限を有しています。
(2)特定財産承継遺言(「相続させる」旨の遺言)の場合
預貯金債権を目的とする特定財産承継遺言については、
改正民法適用の有無によって、対抗要件の必要性や遺言執行者の権限が異なります。
①改正前民法が適用される場合
ア 適用対象
遺言作成日が令和元年6月30日以前である場合
イ 取扱い
「相続させる」旨の遺言は、相続開始と同時に、法定相続分を超える部分についても
当然に権利が移転すると解されていました。
そのため、対抗要件を具備しなくても、第三者に権利取得を対抗することができます。
また、この場合、遺言執行者には、
被相続人名義の預貯金債権について、対抗要件を具備する権限も義務もないとされています。
実務上は、権利を取得した受益相続人本人が、金融機関に対して直接手続きを行います。
②改正民法が適用される場合
ア 適用対象
遺言作成日が令和元年7月1日以降である場合
イ 取扱い
法定相続分を超える部分については、対抗要件を具備しなければ、第三者に対抗することが
できません。預貯金債権については、民法第467条の通知又は承諾によって対抗要件を具備
することになります。
また、遺言執行者は、
・対抗要件を具備する権限
・金融機関に対して単独で払戻しや解約を請求する権限を有しています。
令和元年(2019年)7月1日の改正民法施行により、
民法第909条の2(遺産の分割前における預貯金債権の行使)が新設されました。
これは、
各共同相続人が、遺産分割前であっても一定の範囲で預貯金を単独で払い戻すことができる制度です。
この制度は、次のような実務上の問題に対応するために創設されました。
①被相続人が一家の収入源であった場合、遺族が当面の生活費を引き出せない。
②葬儀費用など緊急の支出についても、相続人全員の同意や裁判所の手続が必要になる。
③相続人間に対立があると、長期間預貯金に手を付けられない。
そのため、遺産分割協議が成立する前、あるいは遺言の存在が判明する前の段階で、
共同相続人が金融機関に対して単独で払戻しを請求することがあります。
遺言執行者としては、就任後、速やかに対抗要件を具備するなど必要な執行行為に着手し、
執行業務の停滞や権利関係の混乱を防止するよう努める必要があります。
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