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遺言執行者は、遺言者の最終意思を実現するために選任される者であり、
相続財産の管理その他遺言の執行に必要な権限を有するとともに、
その職務を適正に遂行するための各種義務を負います。
遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、法律上さまざまな権限を有しています。
(1)一般的執行権限(民法第1012条第1項)
遺言執行者は、
相続財産の管理その他遺言の執行に、必要な一切の行為をする権利義務を有します。
この規定により、遺言執行者は遺言の内容を実現するために必要な範囲で、財産の調査、管理、引渡し、契約締結その他の執行行為を行うことができます。
(2)特定財産承継遺言に関する登記申請権限(民法第1014条第2項)
特定財産承継遺言とは、「○○不動産を長男に相続させる」といった遺言をいいます。
遺言執行者は、このような遺言によって取得した権利について、所有権移転登記などの対抗要件を備えるために必要な行為をすることができます。
平成30年民法改正により、遺言執行者が単独で相続登記を申請できることが明文化され、
他の相続人の協力が得られない場合でも、円滑な遺言執行が可能となりました。
(3)預貯金の払戻し、解約及び名義変更に関する権限(民法第1014条第3項)
遺言執行者は、遺言の対象となった預貯金債権について、
払戻しの請求、預金契約の解約又は名義変更その他の必要な手続を行うことができます。
この権限により、
金融機関における相続手続を、遺言執行者が主体となって進めることが可能となります。
(4)復任権(民法第1016条第1項)
遺言執行者は、
自己の責任において、第三者にその任務の全部又は一部を行わせることができます。
平成30年民法改正前は、
「やむを得ない事由」がなければ、第三者に任務を行わせることができませんでした。
しかし、現行法では、
遺言に別段の定めがない限り、遺言執行者の判断で復任者を選任することができます。
そのため、行政書士、司法書士、税理士その他の専門家に個別業務を委ねることも可能です。
(1)相続人による妨害行為の禁止(民法第1013条)
遺言執行者がある場合、相続人は遺言執行を妨げる行為をすることができません。
たとえば、遺言により受遺者へ引き渡される予定の不動産を、
相続人が勝手に第三者へ売却するような行為がこれに該当します。
(2)妨害行為の効力(民法第1013条第2項)
相続人がした遺言執行を妨げる行為は、原則として無効となります。
もっとも、
取引の安全を保護するため、善意の第三者に対してはその無効を主張することができません。
遺言執行者は強力な権限を有する反面、その職務を適正に遂行するための各種義務を負います。
(1)遺言内容の通知義務(民法第1007条第2項)
遺言執行者は、任務を開始したときは、
遅滞なく遺言の内容を相続人に通知しなければなりません。
この規定は、相続人に対して遺言執行の内容を明らかにし、手続の透明性を確保することを目的としています。
(2)相続財産目録の作成・交付義務(民法第1011条)
遺言執行者は、遅滞なく相続財産の目録を作成し、相続人に交付しなければなりません。
また、相続人から請求があった場合には、その立会いのもとで財産目録を作成し、又は公証人に作成させなければなりません(民法第1011条第2項)。
(3)善良な管理者の注意義務(民法第1012条第3項、第644条)
遺言執行者は、善良な管理者の注意をもって任務を遂行しなければなりません。
これは、一般に「善管注意義務」と呼ばれ、
遺言執行者の立場や能力に応じて期待される注意義務を尽くすことを意味します。
そのため、弁護士、司法書士、行政書士などの専門家が遺言執行者に就任した場合には、一般人よりも高度な注意義務が求められることがあります。
(4)報告義務及び受領物引渡義務(民法第1012条第3項、第645条、第646条)
① 報告義務
遺言執行者は、相続人から請求を受けた場合には、いつでも職務の状況を報告しなければ
なりません。また、任務終了後には、遅滞なく職務の経過及び結果を報告する義務があります。
② 受領物引渡義務
遺言執行者は、職務の遂行により受け取った金銭その他の財産を、相続人又は受遺者に
引き渡さなければなりません。
以上のように、遺言執行者には強力な権限が与えられている一方で、
善管注意義務や財産目録作成義務、報告義務などの重要な責任も課されています。
そのため、親族を遺言執行者として指定する場合には、相続手続に伴う事務負担や、
他の相続人との利害対立が生じる可能性についても十分に考慮する必要があります。
また、遺産内容が複雑である場合や、相続人間の紛争が予想される場合には、
復任制度を活用して専門家の支援を受けることや、
当初から専門家を遺言執行者として指定しておくことも有効な選択肢といえるでしょう。
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