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「法定遺言事項」とは、
遺言書に記載することによって法律上の効力が認められる事項をいいます。
法定遺言事項には、主として次のようなものがあります。
・相続や財産に関する事項(相続分の指定、遺産分割方法の指定、遺贈など)
・身分に関する事項(認知、推定相続人の廃除など)
・遺言執行に関する事項(遺言執行者の指定など)
・その他の事項(祭祀主宰者の指定、生命保険契約等の保険金受取人の変更など)
これらの法定遺言事項は、遺言執行との関係で、次の二つに大別することができます。
① 遺言執行によって、初めて実現される遺言事項
② 特段の執行行為を要せず、遺言の効力発生によって実現される遺言事項
さらに、
①の「遺言執行によって初めて実現される遺言事項」は、次の二つに分類することができます。
・遺言執行者でなければ執行できない遺言事項
・遺言執行者がいなくても執行できる遺言事項
※ただし、遺言執行者がいる場合には、原則として遺言執行者が執行します。
(1)遺言執行者でなければ執行できない遺言事項
次の事項は、遺言執行者の専権事項とされており、遺言執行者が存在しない場合には、
家庭裁判所に対して、遺言執行者選任の申立てを行う必要があります。
① 遺言による認知(民法第781条第2項、戸籍法第64条)
認知とは、婚姻関係にない男女の間に生まれた子について、父が法律上の親子関係を認めることをいいます。
遺言によって認知をする場合には、遺言執行者が認知届を提出しなければなりません。
② 推定相続人の廃除又は廃除の取消し(民法第893条、第894条第2項)
推定相続人の廃除とは、被相続人に対する虐待や重大な侮辱などがあった場合に、
その者の相続権を失わせる制度です。
遺言による推定相続人の廃除又は廃除の取消しがされた場合には、
遺言執行者が遺言の効力発生後、遅滞なく家庭裁判所に請求しなければなりません。
③ 一般社団法人の設立又は寄附行為
遺言によって財産を拠出して、一般社団法人を設立する場合や、特定の団体へ寄附を行う場合には、設立手続や財産移転手続を実際に行う者が必要となります。
そのため、これらの手続は遺言執行者が担うことになります。
(2)遺言執行者がいなくても執行できる遺言事項
次の事項は、遺言執行者が存在しなくても実現することができます。
もっとも、遺言執行者が指定されている場合には、円滑かつ確実な遺言執行のため、
通常は遺言執行者がその手続を行います。
① 遺贈
遺贈とは、遺言によって財産を無償で与えることをいいます。
通常、不動産の所有権移転登記は、登記義務者と登記権利者による共同申請によって行います。しかし、遺言執行者がいる場合には、
遺言執行者が相続人全員に代わって登記義務者として手続を行うことができます。
そのため、相続人が多数いる場合や、相続人間に対立がある場合には、
遺言執行者の存在が重要になります。
② 特定財産承継遺言
特定財産承継遺言とは、「○○不動産を長男に相続させる」といった遺言をいいます。
民法第1014条第2項は、このような遺言がある場合に、
遺言執行者が単独で相続登記を申請する権限を有することを明文化しています。
③ 生命保険契約等の保険金受取人の変更
保険法の施行後に締結された生命保険契約については、遺言による保険金受取人の変更が
認められています。もっとも、その効力を保険会社に対抗するためには、
遺言者の死亡後に相続人から保険会社へ通知をしなければなりません。
この通知が遅れると、保険会社が旧受取人へ保険金を支払ってしまうおそれがあります。
そのため、遺言執行者がいる場合には、
民法第1012条第1項に基づき、遺言執行者が速やかに保険会社へ通知を行うことが重要です。
次に掲げる事項は、遺言の効力発生によって、当然に法的効果が生じるため、
原則として遺言執行者による執行行為を必要としません。
① 未成年後見人及び未成年後見監督人の指定(民法第839条、第848条)
② 相続分の指定又は指定の委託(民法第902条)
③ 遺産分割方法の指定又は指定の委託(民法第908条。但し、特定財産承継遺言を除きます。)
④ 遺産分割の禁止(民法第908条)
⑤ 相続人間の担保責任に関する定め(民法第914条)
⑥ 遺言執行者の指定又は指定の委託(民法第1006条)
⑦ 遺言執行者の復任権及び任務執行方法に関する定め(民法第1016条第1項、第1017条第1項)
以上のように、法定遺言事項の中には、
・遺言執行者による執行が不可欠なもの
・遺言の効力発生と同時に当然に効果が生じるもの
もあります。
そのため、遺言執行者としては、
まず対象となる遺言事項がどちらに属するのかを正確に把握することが重要です。
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