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遺贈とは、遺言によって財産を無償で承継させることをいいます。
遺贈は、遺言者の一方的な意思表示によって成立する死後処分であり、
契約である贈与とは異なり、受遺者の承諾を要しません。
遺言者の死亡によって効力が発生します。遺贈に関係する主な当事者は次のとおりです。
・遺贈者:遺贈をする被相続人(遺言者)
・受遺者:遺贈を受ける者(個人・法人を問わない)
・遺贈義務者:遺贈を実現する義務を負う者
遺贈義務者は通常は相続人ですが、
遺言執行者が選任されている場合には、遺言執行者が遺言の執行として遺贈を実現します。
遺贈は、大きく「特定遺贈」と「包括遺贈」の二つに分類されます。
(1)特定遺贈
特定遺贈とは、特定の財産を指定して行う遺贈です。
【例】
・〇〇市所在の土地をAに遺贈する
・A銀行〇〇支店の預金をBに遺贈する
特定遺贈では、受遺者は指定された財産のみを取得し、相続債務を承継しません。
(2)包括遺贈
包括遺贈とは、遺産の全部又は一定割合を包括的に取得させる遺贈です。
【例】
・全財産をAに遺贈する
・全財産の3分の1をBに遺贈する
包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有し、
積極財産だけでなく消極財産(債務)も承継します。
(3)その他の遺贈
実務上は次のような類型も見られます。
・負担付遺贈
・条件付遺贈
・期限付遺贈
・清算型遺贈
遺言執行者は、まず遺言内容を確認し、遺贈の内容を正確に把握する必要があります。
(1)受遺者の特定
受遺者の氏名や法人名が明確であるかを確認します。
また、遺言者死亡時に受遺者が生存しているかも確認する必要があります。
(2)遺贈財産の特定
不動産、預貯金、株式など、遺贈の対象財産が特定できるかを確認します。
記載内容が曖昧な場合には、戸籍、登記事項証明書、預金資料などから補充的に調査する必要があります。
(3)負担や条件の有無
負担付遺贈や条件付遺贈の場合には、その内容を確認し、履行方法を検討します。
民法第994条本文は、受遺者が遺言者より先に死亡した場合には、その遺贈は効力を生じないと定めています。
したがって、遺言者死亡時に受遺者が既に死亡していた場合には、その遺贈は失効します。
もっとも、遺言者が別段の意思表示をしている場合には、その意思が優先されます(民法第994条ただし書)。
【例】
「Aが私より先に死亡していた場合には、その子Bに遺贈する」
このような予備的遺言が記載されている場合には、その内容に従って執行します。
遺贈は遺言者の死亡によって当然に効力が生じますが、
受遺者は自由に受けるか否かを選択できます。
(1)特定遺贈の放棄
特定受遺者は、遺贈義務者に対する意思表示によっていつでも放棄することができます。
放棄のために家庭裁判所での手続は不要です。
(2)包括遺贈の放棄
包括受遺者は相続人と同様に扱われるため、自己のために包括遺贈があったことを
知った日から3か月以内に家庭裁判所へ放棄の申述をしなければなりません。
特定遺贈では、放棄期間の制限がないため、受遺者が態度を明らかにしない場合があります。
このような場合、利害関係人は民法第987条に基づき、
受遺者に対して承認又は放棄の意思表示をするよう催告することができます。
(1)催告権者
・相続人
・遺言執行者
・その他の利害関係人
(2)催告の方法
相当の期間を定めて回答を求めます。実務上は、後日の証拠を残すため内容証明郵便を利用することが一般的です。
(3)催告の効果
受遺者が期間内に回答しない場合には、遺贈を承認したものとみなされます(民法第987条後段)。
特定遺贈の承認又は放棄は、一度意思表示をすると、原則として撤回することができません(民法第989条第1項)。もっとも、意思表示そのものに瑕疵がある場合には取消しが認められます。
(1)制限行為能力者による意思表示
・未成年者や成年被後見人等が適法な同意を得ずに行った場合
(2)詐欺又は強迫
・虚偽の説明や脅迫によって承認又は放棄をした場合
(3)錯誤
・重要な事実について誤認があった場合
なお、取消権は追認可能時から6か月、又は承認・放棄の時から10年を経過すると消滅します。
受遺者が遺贈を承認した場合、遺言執行者は遺贈財産を受遺者へ移転します。
具体的には次のような手続を行います。
・不動産の所有権移転登記
・預貯金の払戻し及び交付
・株式の名義変更
・動産の引渡し
遺言執行者が選任されている場合には、相続人全員の協力を得ることなく執行できる場面も
多く、円滑な遺贈の実現が可能になります。
遺贈の目的物に欠陥がある場合の責任については、令和2年(2020年)4月1日施行の改正民法により大きく変更されました。
(1)適用法の判断基準
新旧法の適用は遺言作成日ではなく、遺言者の死亡日によって決まります。
・2020年3月31日以前の死亡:改正前民法
・2020年4月1日以後の死亡:改正民法
(2)改正民法の原則
民法第998条は、遺贈義務者は「相続開始時の状態」で目的物又は権利を引き渡し、
又は移転すれば足りると定めています。
したがって、遺言者が別段の意思表示をしていない限り、
遺贈義務者は現状有姿で引き渡せば義務を果たしたことになります。
遺贈の執行では、受遺者の確定、遺贈財産の特定、放棄の有無の確認が重要になります。
特に、相続人以外の者への遺贈がある場合には、
相続人との利害対立が生じやすく、遺言執行者の役割が大きくなります。
遺言執行者は、遺言内容を正確に把握し、受遺者及び相続人との連絡調整を行いながら、
迅速かつ適正な財産移転を実現することが求められます。
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