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「共同相続人間の担保責任」とは、ある相続人が取得した財産に「瑕疵(欠陥)」、
すなわち、本来備わっているべき価値や品質が欠けている場合、
他の相続人がその相続分に応じて損失を分担し、相続人間の衡平(公平性)を図る制度です。
ここでいう瑕疵とは、
法律上または物理的な欠陥を指し、主に以下の6つのパターンが該当します。
①権利の他属性(財産の全部または一部が、実は第三者の所有物であった)
②数量の不足(取得した土地の登記面積よりも実際の土地面積が著しく不足していた)
③一部滅失(相続開始時または分割時に、建物の一部が取り壊されていた)
④権利制限(財産に他人の借地権や抵当権が付着しており、自由な利用が妨げられている)
⑤債務者の無資力(相続した貸金債権などの債務者が倒産等で回収が不可能である)
⑥隠れた瑕疵(シロアリ被害、建物の構造欠陥、土壌汚染など物理的欠陥が後から判明した)
実際に、相続した遺産の瑕疵が発覚した場合、原則は「金銭による解決」になります。
判例(最高裁平成1年2月9日判決)では、法的安定性を重視する立場から、
一度成立した遺産分割協議については瑕疵が極めて重大だったり、
遺産分割の目的が達成できないような極端な状況を除いて、担保責任のみを理由に「解除」することを原則として認めていません。
もし容易に解除を認めれば、
すでに処分された他の財産や、第三者が関与する法律関係まで混乱を来すからです。
そのため、瑕疵によって生じた損失額を、他の相続人が具体的相続分(実際に相続した分)に
応じて金銭で支払うという解決方法が一般的です。
たとえば、遺産分割で代償金支払いによる代償分割が行われた例として、
・相続人Aが3,000万円の価値がある前提で不動産を相続し、
・相続人BとCにそれぞれ1,000万円ずつの代償金を支払ったとします。
後に不動産の瑕疵により時価が1,500万円しかないことが判明した場合、
AはBとCに対し、払いすぎた代償金の返還(各500万円の減額)を求めることができます。
また別の例として、長男が相続した建物(欠陥が無いとして相続した建物)に欠陥があり、
600万円の補修費が必要となった場合、他の相続人の二男と長女に対し、
それぞれの相続分に応じた金額(例えば各200万円)を請求することが可能です。
「共同相続人間の担保責任」の規定がある以上、
相続発生後に「誰がいくら負担するか」で新たな争いを生む可能性もあります。
そこで、相続前に遺産の所有者ができる対策として、次の2つを検討します。
(1)遺言による担保責任の排除・変更
民法第914条では、共同相続人の担保責任規定(民法第911条、912条、913条)にかかわらず、被相続人(本人)が民法の規定と異なる意思表示を遺言でした場合、
担保責任の排除・変更を認めています。
たとえば、次のような意思表示があります。
①担保責任を全部免除する
※「瑕疵があっても、特定の相続人は他の相続人に対して担保責任を問わないものとする」
と定めることで、分割後の蒸し返しを防ぎます。
②特定の相続人に責任を集中させる
※特定の財産に不安がある場合、そのリスクを承知で取得する相続人に全ての責任を負わせる、
あるいは逆に資力のある相続人に負担を肩代わりさせるよう指定できます。
③負担割合を調整する
※配偶者が生活に困窮しないよう、配偶者の負担分を他の子供たちが肩代わりするよう定める
ことも可能です。
(2)担保責任の「根本原因を消滅」させる
被相続人(本人)の意思として、遺言で担保責任を排除・変更しても、実際に欠陥がある遺産を取得した相続人からすれば、内心「不公平感」そのものが消えるわけではありません。
遺言はあくまで法的解決策であり、感情的なわだかまりまでは解決できないこともあります。
そこで、揉める原因となる瑕疵について、
本人が生前に解消できれば「争う元」がなくなります。
遺産の中でも、特に瑕疵を含む可能性が高いのが不動産です。
不動産に瑕疵がある場合、
次のような生前対策をしておくと相続人同士で争う必要がなくなります。
①土地の測量・境界確定
境界が未確定なら、隣地所有者と協議して筆界確認書を取り交し、
地積更正登記まで完了させることで、将来の境界紛争や土地面積の減少は発生しません。
②越境・被越境の解消
隣地所有者と協議して、境界線を越えて存在する工作物など、削る(斫る)ことで所有地内に
収まる場合は物理的に解消する。削れない場合は、越境物を将来撤去する旨の覚書を締結する。
③再建築不可の是正
接道義務を満たすための間口不足が要因である場合は、
隣地の一部を買い取るか、通行地役権を設定して「再建築可能」な状態に是正しておく。
④資産の組み換え(買い替え・現金化)
瑕疵の解消が難しい不動産は、
別の不動産に買い替えるか、売却して現金など金融資産に換えておく。
⑤その他
地方の山林や農地など、奪い合いではなく「押し付け合い」で揉めそうな、いわゆる「負動産」の場合、相続土地国庫帰属制度が使えれば、国引き取ってもらうことも選択の一つです。
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