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「所在等不明共有者の持分譲渡権限付与制度」とは、
共有者が他の共有者を知ることができず、または、他の共有者の
所在を知ることができない場合に、裁判所の判断により、
所在等不明共有者以外の共有者全員が、第三者に対して、持分全部
を譲渡することを条件に、所在等不明共有者の持分を譲渡する権限
を与えることができる制度です。
「持分譲渡権限付与制度」の規定は、所有権以外であっても、地上権・賃借権・使用借権など不動産の使用収益
をする権利が、数人の共有に属する場合についても準用されています。
但し、遺産共有の共有物については、相続開始から10年が経過してなければ、持分譲渡権限付与の裁判をする
ことはできません。
共有不動産の共有者が、共有持分を第三者に売却して共有解消する
ための方法には、次の2つがあります。
①共有者全員が持分を同じ第三者に売却する方法
→ 共有者全員による全部共同売却
②共有者の一人の持分だけを第三者に売却する方法
→ 共有者の1人による一部単独売却
このうち、②の方法では、共有不動産全体を売却した場合に比べて共有減価(実勢価格の2~3割減額)が
生じて買い取り価格が低くなるため、共有者は、①の方法により共有持分を売却するのが望ましいといえます。
しかし、所在等不明共有者がいる場合、売却の同意が得られませんので、①の方法をとることができません。
また、他で解説の「所在等不明共有者の持分取得制度」を利用して、所在等不明共有者の持分を他の共有者に
移転してから共有物全体を売却することもできますが、「財産管理人の選任」や「失踪宣告」申立てより手続き
は簡略化されるものの、依然これも迂遠な方法であり、手間や費用が無駄になるという考え方もあります。
そこで、民法改正により所在等不明共有者の持分について、所在等不明共有者以外の共有者に対して、
これを譲渡する権限を付与する裁判の仕組みが設けられました。
これにより、A、B、Cの3人が共有する不動産について、Bが所在等不明共有者である場合、裁判により
AにBの持分の譲渡権限が付与されれば、AとCだけで共有不動産全体を売却することが可能となります。
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