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遺言の基礎知識

<目 次>

遺言の目的

遺言とは、遺言者が築いてきた財産を、残された家族らに有意義に活用してもらうために、遺言者が行う最後の意思表示です。

民法964条には「遺言者(被相続人)は、遺言によって財産の全部または一部を処分することができます」と
定められています。

 その効果として、遺産相続においては「遺言者の意思」が最優先であり、遺言書の内容は遺産分割協議や法定相続分に優先することになります。

そのため、遺言を準備する目的は、遺産の行方を法定分や協議結果に委ねることなく、「遺産を譲る」という形で遺言者自身の想いを示すことになります。

遺言自由の原則と3つの制限

●被相続人が、生前に自由に処分できた自分の財産をどのように

 処分しようとも、原則自由であり、法定相続分に反する遺言、

 他の相続人の遺留分を侵害する遺言も自由である。

●「遺言をする・しない」、遺言書作成後に「変更・撤回をする・

 しない」も自由であるが、以下の3つの制限がある。

 

<遺言自由の3つの制限>
1.遺言能力による制限
  ※満15歳に達すれば遺言できる。
  ※「遺言内容を理解し、遺言の結果を弁識し得るに足る能力」があること。
  ※遺言内容が単純(理解できる=遺言能力あり)か、複雑(理解できない=遺言能力なし)か、
   で遺言能力の有無が分かれることが起こりうるので、できるだけシンプルな書き方が望ましい。
  ※「成年被後見人、被保佐人、被補助人」であっても、事理を弁識する能力が一時的に回復した時は、
   医師2人以上の立会いにより遺言できる。
  ※認知症による遺言能力の有無が将来争われそうな場合は、医師の診断書、遺言時の状況を動画で
   遺しておくとよい。

 

2.遺留分による制限
  ※他の相続人の遺留分を侵害する遺言も有効であるが、遺留分侵害額請求権(民1046)を受ける可能性は 
   残される。

 

3.公序良俗による制限
  ※公の秩序や善良な風俗に反すると判断される場合は制限される。
  例)「婚姻外の愛人に全財産を遺贈したい」等

遺言の効力発生時

●遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生じる。(民985①)

 遺言の撤回及び取消し

1.遺言の撤回
 
●遺言者はいつでも、遺言の方式に従って、
 その遺言の全部又は一部を撤回することができる。
 
●遺言を撤回できるのは遺言者本人のみで、
 遺言者の代理人や相続人はできない。
 
●遺言の撤回は遺言でするが、前の方式と同じである必要はなく、 
 公正証書遺言を自筆証書遺言で撤回することができる。
 
例)
「遺言者は、横浜地方法務局所属公証人甲野太郎作成の令和3年4月5日第321号の公正証書遺言を
 全部撤回する。」という内容を新たな遺言書に記載すればよい。
 
 
 
 
2.遺言撤回の方法
 
 イ)前の遺言を撤回する遺言(民1022)
 ロ)前の遺言と抵触する新たな遺言(民1023①)
 ハ)前の遺言と抵触する生前処分など(民1023②)
 ニ)遺言書を故意に破棄すること(民1024前段)
 ホ)遺贈の目的物を故意に破棄すること(民1024後段)
 
 
 
 
3. 撤回された遺言の効力
 
●「一度撤回された遺言」は、その撤回行為が更に撤回され、取消され、効力が生じなくなった時でも、
 効力は回復しない。
 
 ※「一度撤回された遺言」と同じ効力を生じさせたければ、撤回された遺言と同様の遺言を
  新たにすればよい。
 
 
 
 
4.遺言の撤回権の放棄の禁止
 
●この撤回権は、放棄することはできない。(民1026)
 
 
 
 
5. 負担付き遺贈に係る遺言の取消し
 
●負担付き遺贈は、受遺者が負担を履行しない場合でも、当然には無効とならない。
 その場合、相続人及び 遺言執行者が相当期間を定めて履行の催促をし、その期間内に履行が無い場合は、
 「負担付き遺贈に係る遺言の取消し」を家庭裁判所に請求することができる。(民1027)
 
●「負担付き遺贈」が取り消された場合、遡及的に効力を失い「負担付き贈与は無かったこと」になり、
 その対象財産は相続人に帰属する。
 
 ※負担付き遺贈の受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも遺贈の放棄ができる。
  その場合、負担を受けるべき人(受益者)が、自ら受遺者となる。但し、遺言で別段の定めは可。
 
 ※負担付き遺贈をする場合は、当該遺贈を放棄したりしない人を受遺者に選定する必要がある。
  受遺者は遺贈の目的物の価格を超えない限度で負担義務を負うため、受遺者の負担が過重にならないよう
  に、遺贈の目的と負担の内容をよく考え、あらかじめ受遺者にしようと思っている人とよく相談して
  負担付き遺贈の遺言をした方が良い。
 
<遺贈とは>
→相続人以外に財産を譲りたい場合、遺言により個人の財産を承継させること。

法定遺言事項

●遺言書には何を書いてもよいが、法的に効力を有する遺言事項は限られており、それ以外の事項を遺言に
 書いても、それは希望や付言となる。(限定列挙)

●遺言作成の第一歩は、法定遺言事項か否か、の確認である。

※婚姻や養子縁組に関する内容は認められない。

遺言の方式(種類)

●遺言は、目的や方式によって7種類に区分される。

1.普通方式遺言

(1)自筆証書遺言・・・遺言保管制度あり
(2)公正証書遺言
(3)秘密証書遺言

2.特別方式遺言(危急時遺言、隔絶地遺言)

(4)一般危急時遺言(死亡危急者遺言)
(5)難船危急時遺言(船舶遭難者遺言)
(6)伝染病隔離者遺言(一般隔離地遺言)
(7)在船者遺言(船舶隔絶地遺言)

共同遺言の禁止

●共同遺言の禁止とは、2人以上が同じ紙に遺言を書くことを禁止
 したもので、2人以上が同じ紙に遺言を書いた場合、その遺言は
 無効となる。(民法975条)

1.共同遺言が禁止されている理由

●共同遺言では、もう一方の作成者の意思が影響して、自由に遺言
 を作成できないため。

 

2.共同遺言でも有効になる場合

●夫が一人で自分の遺産の処分内容を書くとともに、同じ紙に妻の遺産の処分内容を書き、
 遺言の内容を妻は知らない場合、妻に関する内容は無効となり、夫の部分は有効となる可能性はあります。

●夫婦が別々に描いた遺言書が合綴(がってつ)されている場合、夫が書いた遺言書と妻が書いた遺言書が
 合綴されて、各ページに夫の契印がなされている場合でも、両者が容易に切り離すことができるような
 ときは、有効となる可能性があります。

●公正証書遺言では、相続人は証人又は立会人になることはできないため、一方の配偶者は証人とならず
 立会いも行わない(別室で待機する)。尚、自筆証書遺言作成時に相続人(一方配偶者)が立ち会っても、
 遺言は有効と判断された判例があります(平成7年8月21日高知地判)。

 

子供がいない夫婦で、双方が自分自身の死後、
 相手配偶者に財産を遺すことを希望し、夫婦で遺言を作成する場合

     ⇒この場合、共同遺言は禁止のため、解決策として
   夫婦それぞれが別々の遺言書(夫婦たすきがけ遺言)を作成する。

 

3.「夫婦たすきがけ遺言」作成時の留意点

●「夫婦たすきがけ遺言」とは、夫は「自分が妻より先に死んだ場合には遺産は(すべて)妻に相続させる。」
 という遺言書を書いておき、妻は「自分が夫より先に死んだ場合には遺産は(すべて)夫に相続させる。」と
 いう遺言書を、相互に書いておくことです。

 子どもがいない夫婦で、夫婦それぞれの親も他界している場合、遺産の全てを残された配偶者に渡したいと
 思っても、遺言を作成しておかなければ、遺産の一部が自分の兄弟姉妹(既に亡くなっている場合は甥や姪
 に渡ってしまいます。

 一方、「たすきがけ遺言」を夫婦相互でしておけば、夫婦のどちらが先に亡くなっても、残された配偶者の
 心配をしなくてよくなります。

「検認」とは

●「検認」とは、家庭裁判所が相続人に対し、遺言の存在及びその内容を知らせるとともに、

 「遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名等」検認の日現在における遺言書の内容を明確にすることで

 「遺言書の偽造・変造を防止するための手続き」であり遺言の有効・無効を判断する手続きではない。

遺言執行者の指定

●遺言執行者とは、遺言を執行し、遺言内容を実現する人をいう。

●「遺言執行者は、遺言の内容を実現する為、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする
 権利義務を有する」(民1012①)

※民法改正により、下線部が加筆された。

 

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